BTS(防弾少年団)英語→日本語 翻訳の部屋

「防弾少年団」(BTS)が取り上げられた英語媒体の記事やニュースをファンが和訳して載せているブログ。翻訳には意訳部分も多くなりますのでご了承ください。

Halsey寄稿コラム:TIME 2019年最も影響力のある100人

アメリカTIME誌が選出した2019年版「世界で最も影響力のある100人」にBTSが選ばれました。100人の一覧はこちらのwebサイトで見れます。

 

time.com

 

以下、TIME誌にアーティストのHalseyが寄稿したコラムを和訳します。

 

↓オリジナル記事はこちら↓

time.com

 

 

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世界制覇を成し遂げるには具体的に何が必要なのだろうか?目覚ましいほどの才能、魅力、思いやり、利他的な精神、そして献身が必要だろう。しかし鍵となる必須要件がもう一つある。それはあなたの努力を後押してくれて、よろめいたときに支えてくれて、毎晩、目からキラキラした輝きを放ちあなたという名の空にまで光を届けてくれるような、愛情深いコミュニティーの存在だ。
 

BTSはトップに君臨したのは、こうした要因によるものだ。このK-popグループは過去数年に渡り、音楽業界に旋風を巻き起こしてきた。既存の売上記録を破り、各方面から称賛を受け、世界中で公演を行う一方で、韓国大衆文化を発信する模範的な大使としての役割も果たし続けてきた。しかしBTSという3文字のグループの背後にいるのは、音楽は言葉の壁を越えられると信じている驚くべき7人の若者たちだ。彼らにとって音楽は、普遍的な言語なのである。

 

生き生きとした楽曲に秘められた自尊心についての前向きなメッセージや複雑な哲学、洗練された振り付けのステップ一つ一つに見られる本物のシナジーとメンバー同士の絆、そして数え切れないほどの慈善関連活動などにより、BTSはいまや何百万人のファンやその抗いがたい魅力に惹かれる人たちにとってのロールモデルとして前進し続けている。

 

私自身、ボーイズ(私や他のファンが彼らを愛情たっぷりに呼ぶ名称だ)とは数年来のつきあいがあり、韓国に行って彼らと交流する機会にも何度か恵まれた。表向きの彼らは、洗練されたプロフェッショナルだ。しかし彼らとシークレットハンドシェイクを交わしたりプレゼントを贈り合ったり笑いあったりする時間を過ごしてみてわかったことは、一分の隙もないパフォーマンスで世界から拍手喝采を受ける彼らの素顔は、音楽とお互いのメンバーとファンを愛する普通の青年たちだということだった。

 

BTSにとって世界制覇とは、彼らの人生というコンテンポラリーダンスのなかでの新たな8カウントである。しかしそれが簡単なことだと思うなら、7人の若者が人生のステップひとつひとつに捧げている愛と努力のなんたるかをまだ知らないからにすぎない。

 

 

Halseyはグラミー賞候補のシンガーソングライターである。

BTSは2018年の次世代リーダーにも選出された。

 

 

  防弾少年団のファンが趣味で翻訳している個人ブログです。翻訳の正確性に責任は持てません。細かい訳漏れ、訳抜けなどある場合がございますのでご了承ください。無断転載はお控えください。和訳を別ブログで紹介していただく場合は、この記事のリンクURLも引用元として貼り付けお願いします。 

 

 

 

 

CBSプレビュー:K-pop旋風BTSの舞台裏

CBS Newsの4/18付のweb記事を和訳しました。

 

プレビュー:K-pop旋風 BTSの舞台裏 

↓オリジナル記事はこちらです。

www.cbsnews.com

 

 次回の"CBS Sunday Morning"は、ワールドツアーを間近に控えて準備を行う韓国出身の大人気POPグループBTSの舞台裏に迫る。ツアー開始前の初のアメリカでのTV番組のインタビューを受けた彼らの、バックステージのリハーサルの様子やリラックスした様子、そしてレポーターのセス・ドーン氏と向き合ってのインタビューは同番組で4/21に放送される。

 

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BTSの音楽はヒップホップとR&Bの要素がミックスされたもので、ステージ上で精巧な振付のダンスで表現される。2013年の最初のアルバム以来、BTSは世界規模の一大現象となり、スタジアムのチケットは軒並み売り切れ、熱狂的なファンはオンステージ、オフステージでの彼らの一挙手一投足を日々見守っている。

7人のメンバーの年齢は21歳〜26歳。ジョングク、ジン、ジミン、シュガ、V、J-HopeとRMというニックネームで呼ばれている。

「こんなにたくさんの愛をもらって驚いています」とJ-Hopeはインタビューで語った。

一方ジョングクはこう語る。「パフォーマンスを始めるときはいつも、インイヤーモニターを外して観客の叫び声や掛け声を聞きます。そうするとエネルギーで満たされるんです。」

ドーンは韓国ソウルまでBTSを訪ねていき、シカゴ、ニュージャージー、カリフォルニアなど世界各国で行われるワールドツアーの準備のための彼らのリハーサルの様子を取材した。

BTSのアメリカでの成功をもっとも印象付けたのは、その歌詞のほとんどが韓国語で書かれている点だ。BTSはグラミー賞のプレゼンターを務めた初めての韓国人アーティストであり、さらについ先日、韓国人で始めてサタデーナイトライブでパフォーマンスをしたアーティストになった。

最初にBTSに加入したRMは、英語が堪能であるためスポークスマンの役割を務めることが多い。彼はアメリカの音楽を聴いたりドラマ『フレンズ』を観て英語を学んだという。

「ポップミュージックも『フレンズ』も大好きです」とRMは言う。「そう、テレビドラマの『フレンズ』です。母が全シーズン分を買ってきてくれて、何度か通しで見ました。ただアメリカのミュージシャンの言っていることを聴いたり理解したり、話をしたりしたかったんです。今はお母さんありがとう!と言いたいですね。」

BTSの7人のメンバーがこの勢いをいつまで謳歌できるかは未知数だ。韓国では兵役の義務があり、今のところメンバーは全員、入隊を先延ばしにしている。「韓国では当然のことです。いつの日か召集がきたら、それに応じてベストを尽くすつもりです」とジンは語った。

 

今はやるべきことがあると彼らは理解している。RMはこう語る。「僕たちはただこの流れに乗って、今という瞬間を生きていきます。僕たちができることはそれだけです。」

 

(終)

 

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CNNニュース「韓国のボーイバンドがSNLに出演」

SNL出演後に、USの各種メディアがこぞってBTSを取り上げてくれています。特にこれは重要な視点を盛り込んでくれているな、と思うものを選んで翻訳していきますね。

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今回の和訳記事はCNNで取り上げられたときのもの。番組ホストであるシリル・ヴァニエールさんのTwitterでニュース動画が紹介されました。Youtubeで該当動画を見つけられなかったのでツイートをそのまま貼り付けます。

 

 

以下、和訳です。

(C:アナウンサーのシヴィル・ヴァニエール氏、J:ジェフ・ベンジャミン氏)

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先日リリースされた最新アルバムで、BTSはアルバム売上数の国際的な記録を塗り替えると予想されています。先行予約はすでに300万枚を超え、K-Popが巨大なビジネスに成長を遂げたことを証明しています。

 
FuseTVのシニアデジタルエディターでありビルボードでK−popコラムニストをつとめるジェフ・ベンジャミンさんにお話をお伺いします。ジェフ、あなたはBTS Army(軍隊)の忠実な歩兵ですか?

 

J:いやあ(笑)なんというか、私はBTSのことをデビューからずっと追いかけてきたので、すごく誇らしい夜でしたね。とても嬉しいです。

C:ちょっと教えて欲しいんです。今日ニュースルームに入ったら突然、周りのプロデューサーがみんな揃ってBTSがサタデーナイトライブに出ることばかり話してるんですよ。なんでこれはそんなに大きな意味があるんですか?

 

J:BTSがいまや世界最大のポップバンドであることは間違いないですが、SNLのステージというのはすべてのアーティストが切望している憧れの舞台です。1週間に出られるアーティストは1組、演奏の機会は2回。また、アーティストのキャリアにとってはイチかバチかの大勝負になります。具体的に名前を出すことは控えますが、これまでSNLでのパフォーマンスがうまくいかなかったアーティストがいたことをみなさん覚えているとおもいます。そういう意味で、キャリアを妨害してしまう危険性もあるし、一方で…

C:BTSのパフォーマンスはどうでしたか?

J:ああ、彼らはやり遂げましたよ。しっかりと期待に応えたとおもいます。SNLで二度目のチャンスはない、1回のテイクでの勝負です。正直少し心配していたんです。7人の男性があまり広くないあのステージで…でも彼らはやり遂げた。ボーカルもダンスも、「問題なし」以上の素晴らしい出来栄えでした。確実に、彼らのキャリアの中でも記念すべき瞬間になったと思います。

C:私自身も含めて、まだBTSのことをよく知らない番組の視聴者に、なぜ彼らがこんなにも人気があるのか教えてもらえますか。


J:そうですね…もちろんBTSはその音楽、ダンス、ビジュアルが素晴らしいという点で、韓国語という言語の壁をこえて世界中の人に訴えかける魅力を十分持っています。でも本当の人気の理由はもっと奥深いと思います。一番の理由は、私自身もここ数年にわたって記事に書いていますが、彼らの音楽に秘められたメッセージがこれまでのPopアーティストのメッセージよりも深いという点にあると僕は思っています。彼らは同世代の若者が向き合っている問題について歌っています。メンタルヘルスの葛藤や、彼らから見た政治のことや、学校での生活やいじめの問題さえも扱っています。いつもメッセージに心がこもっているし、本当に彼らが経験していることをベースに歌っているという感じがあります。そうした姿勢は、彼らがSNSやリアルの場でファンと交流姿勢にも現れています。

C:ということは、少なくともK-popという音楽シーンの中では、彼らはこれまでの既存概念を打ち崩してきたと言ってよいでしょうか?

J:そうですね。社会的な問題について歌ってきたグループは彼らが初めてではないですが、彼らはそのメッセージを自分たちのキャリアのあらゆる局面で中核に据えています。彼らはUNICEFとの"Love Yourself"と名付けられたキャンペーンを行ったこともあります。自己愛や自己認識、若者への暴力撲滅の促進をテーマとして扱いましたが、このキャンペーンは大成功を収めて100万ドル以上の寄付金を集めました。このキャンペーンのメッセージの裏に、一人の人間としてまたアーティストとしてのBTSの思いが存在するとファンが感じたからだと思います。

C:ジェフ・ベンジャミンさん、ありがとうございました。新しいアルバムをすでに聞いてらっしゃるはずですが、時間がないので本当に簡潔に、いかがでしたか?

J:ええ、今回のアルバムは2014年のアルバム2作からの引用も多く、長年のファンにとっては贈り物のような内容です。でもとにかく音楽が良いので、ぜひ聞いてみてください。

C:今のところまだ僕の好みにどんぴしゃではないのですが、プロデューサーたちがぜひ聞けと迫ってくるので(笑)…またお話しましょう。ありがとうございました。

J:ありがとうございました。

  

 

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【和訳】米国音楽キャリアで過去最大のアワードノミネートを受けたBTSと、それがもたらす変化について

Natalie Morin氏によるREFINERY29のweb記事(2019年4月4日)を和訳しました。

 

オリジナル記事はこちらです↓

www.refinery29.com

 

 

米国音楽キャリアで過去最大のアワードノミネートを受けたBTSと、それがもたらす変化について

 

  

今日行われたビルボードミュージックアワード(以下BBMA)のノミネート発表は、BTSとARMYと呼ばれるそのファンたちにとって歴史に残る感動的な出来事だった。 BTSはすでに2回BBMAのトップソーシャルアーティスト部門を受賞しており、2018年にラスベガスで行われた授賞式ではシングル"Fake Love"のパフォーマンスもしている。しかし今年のトップデュオ・グループ部門でのノミネートは、彼らがソーシャルメディアでの圧倒的な存在感だけでなく、その音楽によって初めて認められたという意味のある出来事になった。
 

これはBTSが長年のあいだ追い求めてきた栄誉でもあった。Entertainment Weeklyのカバーを飾るなどアメリカのエンタメ業界のメインストリームとして確実に存在感を増している彼らは、大手ラジオ局・TV局からのインタビューを受け、グラミー賞のノミネートも獲得した。しかしその音楽性の正当な評価については、大きな壁があったようだ。
 
BTSはアワードへの客寄せやクリック稼ぎとして使われているのではないか、と危惧していたファンもいる。また、ボーイバンドの歌う作品は真剣に分析するに値しないと考えている音楽評論家は存在し、ましてやまだアメリカの音楽業界では数少ないアジア人のアーティストであれば、なおさらその目は厳しい。

今回のノミネートは大きな一歩となるだろう。BBMAのノミネートは評論家の批評ではなくストリーミングやラジオでのオンエアをもとに選出されるが、これはBTSのファンが、一人一人のメンバーの人間性だけでなく、その音楽についても同じぐらい関心を寄せていることを示している。そして、音楽業界がそのことを真の意味で理解したとき(The Beatlesの時代に起こった現象とまったく同じように)、業界や評論家はBTSにもっと敬意を払うことになるだろう。
 
この部門でBTSは、Maroon5、Imagine Dragons、Dan + ShayとPanic! at the Discoという面々を相手に戦うことになる。
 

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BBMAノミネート発表の後に、"BTS paved the way"(BTSが道を切り拓いた)というフレーズがTwitterでトレンド入りした。BTSが同ジャンルの中で最大の影響力を生み出した卓越した存在であり、未来の韓国人アーティストのために扉を開いて新たな道をつくったという考えは、ARMYの間では当然のこととして共有されてきた(そしてときに論争の元にもなってきた。)
また、特にBTSが最初にBBMAのトップソーシャルアーティスト部門のノミネートを受けた2017年頃には、彼らがアメリカに迎合しているとか、才能ではなく単にデジタルでの業績で人気が出ただけだというような批判を受けていたと語るARMYもいる。
 

BTSは今年もトップソーシャルアーティスト部門でノミネートを受けた。しかし今回は、アリアナ・グランデとルイ・トムリンソンに加え、EXOとGOT7という同じ韓国出身グループとタイトル保持をかけて戦うことになる。
 
2019年のBBMAは5/1のアメリカ東部標準時間8:00PM(※日本時間5/2の9:00AM)に、ラスベガスのMGMガーデンアリーナで開催される。
 
(終) 
 
 
 

 

 

 

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【和訳2/2】ザ・グレーテスト・ショーマン:BTSワールドの裏側を独占インタビュー

2019年3月28日に公開されたEntertainment Weeklyオンラインの記事(by Leah Greenblatt氏)の和訳記事です。2回に分けてUPしており、こちらは後編です。

 

オリジナル記事はこちら↓ 

 

ew.com

 

 

前編和訳はこちら↓

www.bts-jpntrans.net




 

ザ・グレーテスト・ショーマン:BTSワールドの裏側を独占インタビュー


 

 

 

 

 

【和訳1/2】ザ・グレーテスト・ショーマン:BTSワールドの裏側を独占インタビュー

2019年3月28日に公開されたEntertainment Weeklyオンラインの記事(by Leah Greenblatt氏)の和訳記事です。2回に分けてUP予定で、こちらは前編です。

 

オリジナル記事はこちら↓ 

 

ew.com

 

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ザ・グレーテスト・ショーマン:BTSワールドの裏側を独占インタビュー

 

エレン・デジェネレスやジミー・ファロンの番組でスポットライトに照らされたソファにずらりと座り、ホストと他愛ない冗談を交わす彼らを見た人もいるだろう。でなければ去年9月の国連総会で、メンタルヘルスや自己愛について真剣に語る彼らの姿、もしくは2月のグラミー賞授賞式で大群のイルカのような高音の歓声に迎え入れられた彼らの、さまざまな色に染められたマカロンカラーの髪とピッタリと仕立てられたタキシード姿を見た人もいるはずだ。

もしかしたら、この雑誌で初めてBTSをまともに認識した人もいるかもしれない(奇怪なことがたくさん起こる2019年だから、ありえなくもない)。しかしこういう言い方はもはや避けられないのだが、BTSの7人はこの2年間、世界を席巻してきた。3ヶ月間という短期間で2つのアルバムをビルボードチャートNo.1に輝かせ、アップルミュージックとSpotifyという音楽配信サービスで合計50億回数もの再生回数を達成し、LAのステープルセンターからロンドンの名高いウェンブリースタジアムまで、数々のコンサートのチケットを完売させてきたグループなのだ。

一世を風靡したボーイバンドは彼らの前にも存在したが、メンバー全員が韓国で生まれ育ち、歌のほとんどが韓国語で歌われているという事実に、これまでとは違う全く新しいものを感じざるを得ない。強硬主義やナショナリズムの傾向を背景に既存の地政学が意味を失いつつある現代にあっても、ポップミュージックが壁や垣根を越えて受け入れられることで、これまでにない「世界通貨」が実現することを証明している。

6つ目のアルバム"Map of the Soul: Persona"の発売から5週間前の、よく晴れた3月のある日のこと。BTSのメンバーは彼らの所属レコードレーベルであるBig Hit Entertainmentの事務所にいた。K-popと呼ばれる現象のさまざまなマジックが誕生した現場である建物なわけだが、ビッグヒットの本社は江南の比較的静かな地域にあり(そう、Psyが2012年の大ヒット曲『カンナムスタイル』で歌ったあの江南である)、他の企業ビルと見た目は変わりなかった。滑らかなコンクリート製の廊下とガラス張りの会議室。会議室には中身が充実したミニ冷蔵庫やぬいぐるみ、ビーンバッグチェアなどが備えられていた。一体ここが何の会社なのかのヒントといえば、驚異的なセールス記録を祝う額縁や彫像が並べられた展示棚と、去年10月のNYシティ・フィールド公演でのメンバーが大きくプリントアウトされたつやつやと輝く写真だけだった。


長いホールを下ると、7人のメンバーがくつろぎながらもそれぞれの準備をしていた。彼らは直接授賞式に参加できないiHeartRadioアワードのThank youビデオを前撮りするところだった。デニムとネオンカラーのストリートウェアがコーディネートされて所狭しと並べられた衣装部屋で、ぷっくりした唇を持つジミンは、金色にブリーチされた髪に注意深くアイロンを当ててもらっていた。部屋の隅には新品のNikeやConverseが何十足も積み上げられている。ストロベリーアイスクリーム色をした人口毛皮のジャケットが1枚、まるで放っておかれたフラグル(アメリカの人形劇のキャラクター)のように、彼の背後のハンガーから無造作にぶら下がっていた。

 
グループの最年少メンバーである21歳のジョングクは、ダンススタジオの折りたたみ椅子におとなしく座り、同じく髪の毛をセットしてもらっている。『シンプソンズ』のキャラクター、バート・シンプソンズが大きく印刷された白いシャツを着たJ-Hopeが通りかかり、ニッコリ笑って消えていった。SUGAとVとジンは隣の部屋でローソファに身を寄せ合い、スマホをスクロールしながらKhalidの"My Bad"の一節を時々口ずさんでいる。最後にやってきたのは、BTSの事実上のリーダーで英語が堪能な唯一のメンバーである24歳のRMだ。

 

彼らはカメラクルーの前でリハをした後、ディレクターが満足するまでコメントのテイクを4,5回行った。その後、上階の風通しのいい休憩室に移動して私たちの会話が始まった。人懐こい顔をした禿げ頭の巨大な男性も同席。彼の名はジョン、BTSの通訳を長年つとめている男性だ。(本文中のRM以外のメンバーの発言は、基本的にすべてジョンの通訳を介したものである。)初のグラミー賞授賞式から帰国して数週間経っていたが、メンバーはまだその経験に興奮気味の様子だった。ベストR&BアルバムでH.E.R.にアワードを手渡したこと、トイレでショーン・メンデスとおしゃべりしたことなど…。「僕、自己紹介したほうがいいのかな?とか考えちゃって」とジミンはその時のことを思い返す。「そしたらショーンが最初に挨拶してくれたんです。すごくいい人でした。」また、彼らの座席がドリー・パートンからクッション1つ分の距離しかなかったことも。(「本当に僕たちのすぐ前だったんです!」とジョングクは改めて感嘆した。「アメージング」。)

セレブリティとの接触を夢見心地に振り返るBTSだが、生身のBTSと会うことも同様に、決して不快ではないが現実味のない、クラクラするような感覚があった。スクリーン上の彼らは見ているこちらが不安になるほど綺麗で、まるで毛穴ひとつないアバターのような、スナップチャットのフィルターの中の住民のような、性別を超越した美しさがある。実際に会う彼らは、もちろん呆れるぐらいハンサムではあるが、もう少し少年ぽくて親近感が持てる。くしゃくしゃの前髪だったり、ちょっぴりひび割れた唇だったり、小さな(本当にごく小さな)肌荒れだったり。バレンシアガのトップスやさりげなくCを重ねたシャネルのジュエリーの存在を脇におけば、まるでカフェや電車ですぐ隣に座っている男子大学生のようにも見えた。

 

しかし、公共の交通機関に乗ったりスターバックスにふらりと立ち寄ったりすることは、ずいぶん前に彼らの選択肢から消えた。ソウルではメイク用品店、道路の看板、バスの側面にまで彼らの顔写真が貼られているし、愛するメンバーの誕生日をお祝いするファンが個人でお金を出し、巨大なデジタル看板にメンバーの顔が映し出されることさえある。サンパウロ、東京、パリなどの大都市で、コンサートやイベントの出番を待つファンが何日も前から徹夜で並びながら、メンバーの目撃情報やささいな情報をせっせと交わしている。BTSが投稿したDrakeの #InMyFeelingsChallenge のツイートは2018年もっともいいねされたものとなり、Mattel社はBTSの公式ドールを今夏にリリース予定だ。

 
こんな奇妙なほどの熱狂的人気の渦の真ん中にいながら、彼らはほんのすこしの「普通の時間」を手に入れようとしてきた。ジミンはシカゴ滞在中に誰にも見つからずにホテルから外に出た時のことを話してくれた。「深夜に、外の空気を吸いたくて。」でもジミンが認めるように、少人数に分かれて行動しない限りホテルから出るのはほとんどの場合「ありえません」。RMは白銀色の前髪を指で撫でながら笑ってつけ加える。「だって、僕たちを見てくださいよ。髪の毛を染めた7人組。ちょっと目立ちすぎますよね」。

その代わり、彼らはできることをやっている。映画館に繰り出したり(「誰にも見られず行くとしたら一番遅い回か最初の回のどちらかです」とRMは話す)、オンラインショッピングをしたり(Vは特にeBayで洋服を買うのが大好きなのだそう)、釣りにいったり、家でStarCraft(オンラインゲーム)をしたり。K-popスターにとって共同生活は普通のことで、BTSも安定した共同生活に満足している様子だ。「もうずっと一緒に暮らしてきました。もうすぐ8年、いや9年かな」とジミン。「最初は喧嘩や対立がいっぱいあったんです。でも今はお互いの顔を見て表情を読み取るだけで、言葉を使わなくても意思疎通できるぐらいになりました。」


インタビュー中も常に丁寧で気配りのある彼らだが、7人が集まるとちょっとしたカオスが生まれる。ふざけて肩を押したり、背中を軽く叩いたり、複雑な動きの握手をしてみたり、まるで子犬たちがわちゃわちゃと動き回っているかのようだ。しかし静かな時間に彼らが見せる、お互いに対する愛情のこもった優しさには驚くべきものがある。彼らは質問が投げかけられたとき、一人一人の考えがしっかりインタビュアーに聞き届けられるように努める。そして言いたいことがうまく言えずに困っている仲間がいればすぐに手を差し伸べて、膝を叩いたり肩を抱く。

話をする相手がアメリカ人記者であるという言葉の壁があっても、彼らの個性はすぐにはっきりと浮き上がってきた。初めて夢中になったポップソングを聞かれた彼らの反応は七人七様だった。「The Pussycat Dollsが好きでした。Stickwitu!」と、グループ随一のダンスの実力の持ち主J-Hopeが、指を鳴らして歌いながら答えた。ソウルのアンダーグラウンドのラップシーンでそのキャリアをスタートさせたRMの答えは、Eminemの"Lose Yourself"。(「他にもこの曲を選ぶ人が世界中にいると想います。でも初めて映画『8 マイル』を観てあのギターを聞いたときのことが忘れられないんです。僕のターニングポイントでした」。)一方、ジャスティン・ビーバーやトロイ・シヴァンの曲のカバーもリリースしているジョングクは、リチャード・マークスの不滅のバラード『Now and Forever』と答えた。

 

穏やかな口調のSUGAはジョン・レノンの『Imagine』を挙げて、「僕が恋に落ちた初めての曲です」と語った。これが話題が出たことを好機と捉え、ビートルズが創始者ともいえる「熱狂的人気グループ」という音楽の殿堂の中で、自分たちがどんな立ち位置にいると考えているのか聞いてみた。「僕たちのことを21世紀のビートルズだと言ってくれているのを聞くと、すごく恥ずかしくなることがあります」とRMは告白した。「でも周りがボーイバンドと呼びたければ僕たちはボーイバンドだし、ボーイグループというならば僕たちはボーイグループで、K-popと呼びたければK-popでかまわないんです」

ああ、K-pop。韓国ではこのジャンルは単なる文化的必需品ではなく、何十億ドル規模の輸出産業である。その輸出産業のプレイヤーである「アイドル」は、歌やダンスや対メディアトレーニングという訓練を何年にもわたって受けた後、ようやくスポットライトを浴びることができる。そしてその努力は報われたと言える。K-pop関連産業は1990年当初以降どんどん拡大していき、少女時代やG-Dragonなどのアイドルはアジア、ヨーロッパ、アメリカの多様なマーケットを横断して活躍した。一方、K-popのサウンドはかなりパターン化していた。クラブ系ビートとハイーパースイートな歌声に西洋のヒップホップとR&Bのアーバン要素を足して抜け目なくミックスしたようなサウンド。BTSが起こした稲妻のようなインパクトを引き起こすことはなかった。


(つづく)


↓後編の和訳はこちらです↓

www.bts-jpntrans.net

 

<参考までに関連動画を貼っておきます> 

【和訳2/2】K-pop界の巨人、BTSが記録を打ち破り続ける理由

2019年2月22日に公開されたGrammy.comの記事(by Ana Yglesias氏)の和訳記事です。2回に分けてUPしており、こちらは後編です。

 

前編はこちら↓

www.bts-jpntrans.net

 

 

オリジナル記事はこちら↓ 

www.grammy.com

 

K-pop界の巨人、
BTSが記録を打ち破り続ける理由

バンタンボーイズには特別な何かがある

 

 

4. 「本物」の音楽をファンに届ける


BTSのルックスと歌声が素晴らしいことは誰の目にも明らかだが、単にそのキラキラした衣装や髪型で目を引いているだけではない。彼らは音楽を通して、メンタルヘルスや自分自身を愛することの意味など、重要なテーマに取り組んでいる。世界中の若者にとってのロールモデルとしての重要な役割を、しっかりと認識しているのだ。韓国ではK-popスターは「アイドル」という存在としてみなされているが、BTSはアイドルとしての責任も決して軽くは考えていない。

遡って2018年9月のこと、Grammy MuseumにてBTSとの対話が行われた。300人のファンが招かれ、アーティストとしての責任をはじめとする幅広いトピックについてBTSの話を聞くことができた。

「今回僕たちの責任とは何かについて、僕たちがどう行動して、どんな音楽をつくるべきかについて考えさせられました。僕たちがしていることや、僕たちがつくる音楽について、深く考えるきっかけになったと思います」と語ったのはジョングクだ。

チームとして協力して楽曲をつくるという製作過程について、また彼らの事務所Big Hit Entertainmentの代表であるパン・シヒョク氏についても話題に上った。「デビューしたばかりの頃、僕たちはパンPDから、自分たちの経験や思い、感情を土台にして曲をつくるべきだと何度も聞かされてきました。なのでそのことはこれまでずっと、僕たちがつくる音楽の中心にあったと思います」とRMは説明した。

またRMは、楽曲制作での協力体制の重要性についても強調する。「僕たちもできるだけ一緒に関わるようにしています。制作プロセスに関わることで音楽や歌がもっと誠実なものになり、僕たちが曲に向き合う姿勢ももっと真摯なものになると思うからです」と彼は語った。



5. BTSはARMYを家族だと考える

BTSの大躍進は、彼らの献身的なファンであるARMYの存在を抜きにしては決して語れないだろう。

事実上、BTSは2つのTwitterアカウントを持っていると言える。公式アカウントである @BTS_twt は、現時点で1,850万人のフォロワーがいる。さらにARMYがそれぞれのTwitterファンアカウントを持ち、これまで通算12万近くの熱量溢れるBTS関連のツイートが発信されてきた。さらにBTSの公式YouTubeページには1,560万人のチャンネル登録者がいる。

ファンがBTSを支えるのと同じように、BTSもファンを支えている。20代前半から半ばの青年であるBTSのメンバーは、ソーシャルメディアをツールとしてオンラインで何百万人ものファンと交流し、自分たちの生活の一部を定期的に共有する方法を熟知している。通常、ソーシャルメディアで一方的に「いいね」とスクロールばかり繰り返していると人は孤独な気持ちに陥るものだが、BTSはソーシャルメディアの世界にポジティブな変革を引き起こした。彼らの発信に対応するかのように、ファンはBTSのYouTubeページを思いやりたっぷりの陽気なコメントで埋め尽くしている。BTSはこうしてファンと一緒に、お互いを支え合う巨大なファミリーを築いているのだ。

 

 

そして、BTSのアメリカ進出はまだ始まったばかりだ。2019年のワールドツアー情報が公開された直後、ファンは興奮気味にTwitterに書き綴った。ビートルズのツアー発表時に親たちも同じ気持ちがしていたのかと想像しているファンもいれば、今回のコンサート会場の重要性を指摘しているファンもいた。たとえば、BTSが5月4日にコンサートを行うLAパサデナのローズボウルは、90,888人のキャパシティーを持つフットボールスタジアムだ。過去にローズボウルでコンサートをしたのは、ローリングストーンズや、去年の9月に2日間にわたってこの巨大な会場でジョイントツアーを行ったビヨンセとJay-Zなど、ビッグネームに限られる。

数は嘘をつかない。様々な記録とチケットの売上、ストリーミング回数、内省的な歌詞と熱狂的なファンベースを持つBTSは、歴史的な成功を成し遂げるための公式をすでに手にしている。それもアメリカだけでなく、世界中で。

 
(終)

 

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《参考記事》

グラミーミュージアムでのインタビューの一部翻訳記事はこちらです。

www.bts-jpntrans.net