BTS(防弾少年団)英語→日本語 翻訳の部屋

「防弾少年団」(BTS)が取り上げられた英語媒体の記事やニュースをファンが和訳して載せているブログ。翻訳には意訳部分も多くなりますのでご了承ください。

【和訳2/2】音楽&歌詞:ストーリーテラー、ミン・ユンギ

2019年7月に投稿されたSeoulbeats.comのweb記事を2回にわけて和訳します。こちらは後半です。

 

↓前半和訳↓

www.bts-jpntrans.net

 

 
↓オリジナルの記事(英語)↓

seoulbeats.com

 

※後半記事の歌詞は英語訳からの日本語訳をしています。
 


音楽&歌詞:ストーリーテラー、ミン・ユンギ

 

しかし自分の脆さを驚くほど率直に晒け出すSUGAは、その後も歌詞の中で自分の不安を表現し続ける。2017年にリリースされたLove Yourself: Herの隠しトラックである"Sea"の中で、彼はこうラップする。

 

かつて恐れていた砂漠が
俺たちの血、汗、涙で海になった
でも幸せの中にある
この恐れはなんだろう?
ここが元は砂漠だったことを
俺たちは皆知っている

 

 
2019年にリリースされたMap Of The Soul: Personaに収録された"Home"でも、彼は同じような思いを歌っている。

世間は俺たちが世界を手に入れたと思ってる
デカい家、デカい車、デカい指輪
欲しいもの全てを手に入れても何か虚しい
全てを成し遂げた人の、初めての感覚

 

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2013年のデビュー曲について言及しないわけにはいかない。それ以降、SUGAは "Ddaeng" や "Nerver Mind"などの曲中でも、ヘイターは彼の意欲を萎えさせるどころか成功に向けて押し上げてくれたと歌っている。また彼は自分を守ってくれた人たちに感謝し、中でも実の兄への感謝の気持ちをミックステープの"Skit"のなかで表している。自分の楽しみの多くを諦めなくてはならなかったことやいつもマスクをつけなくてはならないこと("Outro: Her")を認めながら、SUGAは成功の代償について明確に理解している。リリックを通して彼が語る教訓はとてつもなく説得力がある。もしあなたがとても一生懸命に努力すれば、そしてどんな困難が待ち受けても耐え抜くことができれば、あなたは夢を掴むことができる。SUGAはこのことを“Never Mind” や“Give It To Me”などの曲で強調し、後者の曲中ではこう歌っている。

成功した理由を聞かれても
特に何も言うことはない
少なくともお前より短い睡眠で
お前より練習してここまで来た
成功の秘訣はまだわからないが
失敗の仕方はわかる気がするよ

 


SUGAの言葉で語られる彼の物語はとても魅惑的だ。夢を描け、自分の快適な日常から一歩外に出ろと聞き手を掻き立てる。聞き手は彼の成功例を追いかけて、自分が彼と同じことを成し遂げられるかどうか試したくなる。行く手には確かに困難が待ち受けているが、それでも「前に進め」と彼は"So What"で歌う。

 悩みの9割はお前の頭で作り出した沼だ

 

もちろん、自分と自分の苦しみと自分の夢ばかり追いかけるという姿勢は少しばかり自己中心的だ。SUGAの叙情性がどれだけひたすらに彼自身、つまり熱烈でエゴイスティックな「俺」を中心に展開しているかには目を見張るものがある。Minoの"Fear"やOvanの"Happiness"などの他アーティストの類似曲とは違い、彼の歌詞は彼が他者のためにしたいことではなく、家族のためにしたいことですらない。完全に自分中心のものであり、いわゆる立派な歌詞だとは言えないかもしれない。

だがその代わり、容赦ないほどに正直だ。SUGAがピントを合わせる自分自身、自分の精神状態、自分の欲、自分の成功への渇望は全世界から見えるようにさらけ出されて、まるで鏡のように聞き手に突きつけられる。それは深い浄化作用をもたらし、聞き手の中に眠る似た感情に共鳴してそれを呼び起こし、ほんの少しの時間であれ、聞き手の感情を解放させてくれる。

こんな風にファンとつながれるアーティストは稀少で、それを可能にしているのはSUGAの容赦なき正直さなのだ。


もちろんSUGAのすべての歌詞が彼の物語を中心に回っているといいたいわけではないが、この傾向が有意義であることは確かだ。イ・ソラの"Song Request"(Tabloプロデュース)は、ある女性とラジオの会話からなる歌だ。辛いときに女性はラジオに、もしくは音楽に癒しを求め、泣ける曲が聴きたいとDJに頼む。ラジオは優しく応え、SUGAの声が響く。

そう、僕は誰かにとって春で
誰かにとっては冬
誰かにとっては終わりで
誰かにとっては始まり
誰かにとっては幸せで
誰かにとっては悲しみ
誰かにとっては子守唄で
誰かにとっては騒音
生まれてから終わりまで
君と一緒だよ
どこでも共にいること忘れないで
いつでも君の日々を慰めるから
時々は僕にもたれて休めばいい

 


[M/V] LeeSoRa(이소라) - Song request(신청곡) (Feat. SUGA of BTS)

 

とある曲を聴いたときに、昔それを聞いたときの瞬間、匂い、音、感情を思い出したことがない人はいないのではないか。 音楽は私たちを動かす力がある。明るい日を悲しい日に変えることもできるし、悲しい日を幸せな日に変えることもできる。SUGAのこのポエティックな歌詞は、音楽の力の賛歌だ。

さらにSUGAはラップにバリエーションを盛り込み、それぞれの曲に違う要素を付け加えることがあり、その実験が特にうまくいく場合もある("Boy With Luv"が代表的な例だ)。ラップのバリエーションを毎回期待できるのは楽しい。またファンは、彼が自分の出番になる前につぶやく"SUGA"という囁きを楽しみにしている。

こうしたことすべてが、ミン・ユンギを音楽業界で突出して魅力的なリリシストに仕立て上げている。音楽家とラッパーの顔をしたストーリーテラー。それが繊細さであれ、大胆不敵な攻撃性であれ、彼のパーソナリティーはそのリリックを通じて光り輝く。SUGAの歌詞はそのシンプルさで人を欺くところがあるし、「小さな猫ちゃん」と呼ばれるような可愛いアイドルのルックスも誤解されやすい要因ではあるが。

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アイドルという商業的な成功の道を選んだにもかかわらず、SUGAは唯一無二の叙情性と彼だけが加えられる音楽的な個性を持ち続け、多くの聞き手を癒してきた。もし将来、彼がリリックを通じて自分の物語を語ることをやめたとしても、すでにリリースされた沢山の曲たちがこれから長い期間にわたって、大勢の聞き手に安らぎを与えていくだろう。

 

(終)

●この記事のライターRimiさんのプロフィール

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