【和訳】「すべては人をつなげるためのもの」BTSによる画期的なエキシビジョンについてハンス・ウルリッヒ・オブリストが語った
1/15にCrackで公開されたweb記事から、BTS関連の話題を抜粋して和訳しました。
↓英語の原文記事です↓
「すべては人をつなげるためのもの」BTSによる画期的なエキシビジョンについてハンス・ウルリッヒ・オブリストが語った
※以下の質問に答えているハンス・ウルリッヒ・オブリストは、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーのキュレーターです。
プロジェクトの始まりは?
BTSとのコラボレーションが実現して、とてもワクワクしています。音楽や文学、建築にも視野を広げることで、初めてビジュアルアーツの真価を理解できると信じているからです。我々のプログラムやサウンドトラック、展示会を通じて、音楽との連携は常に非常に大事な要素でした。なのでBTSから連絡があったとき、そして彼らのキュレーターであるイ・デヒョンから複数の団体をプロジェクトに関わらせたいという話を聞いたとき、それは非常にいいアイデアだと答えました(デヒョンとは数年前、彼がヴェネツィアビエンナーレ韓国館のキュレーターをしていたときに出会いました)。BTSの音楽が大好きでしたし、特にこの数年間に彼らが成し遂げたことには非常に興味をそそられていました。彼らはコンテンポラリーアートに対して大いなる情熱を抱いているだけでなく、ポジティブなメッセージを世界に発信して人々の連帯を生み出したいと考えていて、これまでも様々な形式のアートとつながってきました。彼らの願いはとても切迫した重要なことだと感じました。
「この世界に必要なのは別離ではなく共存、疑いではなく愛、孤立ではなく共通の未来」このエテル・アドナン(画家・詩人)のモットーはまさにBTSの音楽がやっていることと同じだと感じました。また彼らの作品の背景にある世界観も非常に興味深かった。彼らはそのストーリーラインの中で頻繁に文学やオルタナティヴユニバースの概念を引用します。また彼らはアーシュラ・ル・グウィン(『ゲド戦記』などの作家)にも興味を持ち、パラレルワールドについても考えを深めていました。こうしたアートの引用は世界観の構築に使われるだけでなく、パーソナルかつ社会的な内容の作品を構築するためにも使われています。彼らは曲中で青春、メンタルヘルス、そして主にユングの「赤の書」にある心理学とも紐付いたテーマを扱っています。
なぜこのプロジェクトのアーティストとしてヤコブ・スティンセンを選んだのですか?
ゲド戦記とユングの影響を受けた彼らの作品は、ヤコブの作品と見事に共鳴しています。BTSの作品の中にあるアイデアとオマージュが、彼らをつなげたのです。RMとして知られるキム・ナムジュンは、ギャラリーや美術館通いを愛していますが、彼はアートを別の世界へとつながる門だと考えており、これはヤコブが彼の「森」を門だと考えていることと似ています。
ヤコブと一緒に働いたことはありましたが、展示会をしたのは今回が初めて。彼とは去年の夏、デービッド・アジェイと共に行った初のAR建築のプロジェクトでコラボしました。いつかデジタル展示館をつくって、ヤコブが公園のあちこちにARのデジタル展示館を設置したら面白いのでははないかといつも考えていました。彼とBTSとの相性は完璧でしたが、それに加えて、Connect, BTSというプロジェクトをもう一段階進化させられたら素晴らしいのではないかと思ったのです。ヤコブはまだ実現したことのない「森」のアイデアを持っていて、我々は実現したことがないアーティストのプロジェクトを実現させるのが大好きだからです。
BTSのファンが特別な存在である理由は?
今回のプロジェクトはファンがコンテンポラリーアートにつながれるようにと、BTSがファンのために企画したものです。K-popファンとBTSファン、そしてコンテンポラリーアートに興味のある人たちの懸け橋になればと思います。BTSが築いてきたオルタナティヴユニバースにはたくさんの要素が含まれています。SF、心理学、コンテンポラリーアート…極めて多様な分野です。昨日来場したBTSのファンをたくさん見ましたが、興味深いことに彼らも多様なバックグラウンドを持つ人たちでした。BTSの素晴らしい点は、たくさんの好奇心を刺激してくれること。音楽やポップ、K-popに興味がある人も、はたまたアートに興味がある人も彼らの作品に惹かれるでしょうし、心理学や社会問題や世の中の不平等の問題に興味を持つ人も彼らの作品に惹かれるでしょう。彼らは曲中で、芸術がどう社会を構築するのか思案しています。彼らのファンは多様です。こうして予想外につながれたことは非常にエキサイティングで、とても幸せなことだと思っています。
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【和訳】BTSのグローバルアートプロジェクトCONNECT, BTSについてあなたが知るべきこと
2020年1月14日に公開されたdazeddigital.comの記事を和訳しました。
↓オリジナルの記事(英語)↓
BTSのグローバルアートプロジェクトCONNECT, BTSについてあなたが知るべきこと
Kpopグループによる大掛かりなアート・エキシビジョンの詳細を知るために、我々はサーペイタインギャラリーに向かった。
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グラミー賞からのBTSの閉め出しで明らかになった、レコーディングアカデミーの文化的な盲点
2019年11月に公開されたforbes.comのweb記事の和訳です。
↓オリジナルの記事(英語)↓
グラミー賞からのBTSの閉め出しで明らかになった、レコーディングアカデミーの文化的な盲点
グラミー賞ノミネートの発表の後に、不当に無視されたとファンが怒りを露わにするのは毎年のことだ。しかし今年のグラミー賞ノミネートの発表では、レコーディングアカデミーによる過去最悪レベルといっていいほどの手落ちが明らかになった。BTSを完全に排除したのだ。
2019年のBTSは過去に前例がないほど絶好調だった。4月にリリースされた'Map of the Soul: Persona'はビルボード200で初登場1位となり、彼らは1年以内でチャートの首位に三度輝いた、1996年のビートルズ以来初のグループとなった(BTSは2018年の'Love Yourself: Tear'と'Love Yourself: Answer'でもビルボード200の首位となっている)。BTSは先日Love Yourself: Speak Yourselfと題したワールドスタジアムツアーを終えたばかりだが、その総収益は1億1,700万ドル近くに上り、チケット売り上げは100万枚近くとなった。またHalseyをフィーチャーしたシングル'Boy with Luv'で彼らにとって最高記録となるビルボードHot100の8位を記録し、RIAAのプラチナ認定を受け、垣根を超えた躍進をさらに印象付けた。
これらはBTSが2019年に達成したことのほんの一部に過ぎない。BTSはグラミー賞ノミネートの本命のように見えた。最優秀アルバム賞や最優秀レコード賞でなくとも、最優秀ポップ・パフォーマンス賞(グループ/デュオ)や、最優秀ポップ・アルバム賞(ボーカル)、少なくとも最優秀ワールドミュージックアルバム賞のノミネートは手堅いように思えた。しかしレコーディングアカデミーは2020年のグラミー賞ノミネートから完全にBTSを閉め出し、それにより自ら慢性的な文化的盲点の持ち主であること、人気の音楽トレンドに痛ましいほど乗り遅れていることをまたも証明してしまったのである。
グラミーと人種の希薄な関係性は周知の事実だ。61年間の歴史の中で最優秀アルバム賞を受賞した黒人アーティストは10人だけで、非白人のアーティストの多くはR&Bやラップ部門に追いやられてきた。グラミー賞候補者と受賞者の歴史を紐解くと、レコーディングアカデミーの中で投票の偏りがあることがわかる。有色人種のアーティストは繰り返し「別物扱い」され、古いアーティストによる可もなく不可もない作品が、圧倒的な商業的成功を収めた新時代アーティストの作品を破って賞を受けてきた。この例で言うと、BTSは両方の点で外されたといえる。
もちろん音楽のクオリティは常に主観的であるし、単純にBTSの昨今のアウトプットがグラミー賞にノミネートされるには不十分だったという否定派もいるだろう。しかし現実を見てみよう。グラミー賞は客観的な音楽性の評価とは事実上、無関係である。レコーディングアカデミーは音楽業界のポリティクスとポピュリズムにより意思決定される、時代遅れな組織なのだ。ケンドリック・ラマーの'Good Kid, M.A.A.D. City'がマックルモア&ライアン・ルイスの'The Heist'に敗れて最優秀ラップアルバムを逃したのも、同じくケンドリック・ラマーの'DAMN.'がブルーノ・マーズの'24K Magic'に敗れて最優秀アルバム賞を逃したのもそれが理由である。
皮肉なのはこうした基準から見たとき、BTSはグラミー賞ノミネートに最もふさわしいグループのひとつだということだ。彼らはアルバム売上、ストリーミング再生数、動画再生数とコンサート来場者数で同年代の白人・西洋アーティストを上回る記録を定期的に残している。西洋アーティストは彼らとのコラボを望んで騒ぎ立て、去年のグラミー自体もそうだったように、アワード授賞式は注目を浴びるために彼らを招待する。グラミーは芸術としての真価よりもポピュリズムに価値を置いた選考を定期的に行ってきたが、BTSはまさに「みんなのバンド」の定義そのものである(もちろん、評論家に高く評価される洗練されたポップミュージックをつくるバンドでもある)。
一筋の希望は、BTSのファンたちがこうした失望に慣れているということだ。今回も彼らはいつもの方法でレスポンスした。つまり、ストリーミング数を強化してBTSに対する愛とサポートを公然と叫んだのだ。Soompiによると本日午後の時点でBTSの韓国語での全作品がアメリカのiTunesのトップアルバムチャートに入り、この記事を書いている時点で #ThisIsBTSがワールドハッシュタグの3位にトレンド入りしている。
BTSはこれからもツアーを行って新しい音楽をリリースし、グラミー賞に認められるかどうかに関わらず、ファンはこれからも彼らを支えていくだろう。いつかレコーディングアカデミーがこのK-popグループの真価を認める日も来るかもしれない。しかし今後BTSが記録を打ち立て続けグラミーが妥当性を失い続けるとしたら、BTSとグラミーのうち、どちらがどちらを必要とするようになるかは明白である。
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【2/2】BTSの生みの親が語る、K-Pop界スーパースターの創設秘話
2019年10月に投稿されたTIMEのweb記事を2回にわけて和訳します。こちらは後半です。
↓オリジナルの記事(英語)↓
↓和訳前半↓
つい先日、K-popの現役・元アイドルが違法行為に関与していたとされる事件がありました。K-pop界でのこうした騒動を見て、自分はこうした問題を避けるための方法をBTSや他の訓練生に訓練生に授けたと感じていますか?
わかりません。確かに訓練生時代から彼らに自由を与え責任について教育したことが、こうしたスキャンダルの予防につながったと説明することもできます。しかしそれは結果論です。今現在の訓練生の仕組みは、ある意味で教育機関に似たものになっています。私たちはチームとして、アーティストに可能な限りのベストな環境をどうやったら提供できるかということをたくさん話し合います。 しかし、だからK-pop業界でのスキャンダルを避けることができたのだと言い切ることはできないです。
K-pop業界の音楽は会社が大量生産するとか、大人が若いアーティストに素材を与えて作らせるトップダウンの仕組みだという認識がありますが、それは正しいでしょうか?
まず言いたいのは、西欧社会にはロックスターにまつわる大きな幻想があるということです。ロックスターというのは自分の魂のままに行動するし、我々はそれを彼らの個性として受け入れなくてはならない。そしてそれを通じて初めていい音楽がつくれる、というような。しかし現実には、長時間を投じて音楽に関連するスキルを磨き上げて訓練するという戦術は、プロフェッショナルな芸術の世界ではよく使われているものです。バレリーナは孤立した環境でバレエに特化した訓練を長い時間かけて積みますが、だからといってバレエに魂がこもっていないとかバレエは芸術じゃないなんていう人はいない。ものの見方の問題だと思います。
また、アメリカではメジャーなレーベルと契約するまでの何年もの期間をアンダーグラウンドで活動することが一般的です。韓国ではそれが訓練生としての期間になります。ただどちらのシステムが良いアーティストを生み出すかについては議論の余地があると思います。付け加えると、アーティストは自分の作った曲を歌ってこそ良い結果がついてくるという考えも、必ずしも真実ではないと思っています。歌手というのはなによりもまずパフォーマーであり、良いパフォーマンスはオーディエンスを納得させることができます。訓練生がスキル向上に時間を費やしすぎて人生の経験値が少なくなってしまうと、果たしてこの世界についての複雑な視点を持つミュージシャンになれるのかという懸念が生まれると私は考えています。
K-Pop's BTS On Why They're Unique, Their Parents' Generation & More | Next Generation Leaders | TIME
アーティスト自らが社会的大義や社会問題に心を寄せているということは、あなたにとってどれぐらい重要ですか?BTSには”Love Yourself”という現在進行形のストーリーがあり、国連と合同で活動を行い、メンバーもメンタルヘルスなどのトピックについて声を上げていますね。
社会問題について発言するかどうかは個人の選択です。彼らに望むものはただ誠実であること。何かを偽ることは許容できません。しかし会社も私も、特定の社会問題について語れとか語るななどと彼らに強制することはできません。個人的には、芸術は革命を起こすための最も力強い手段の一つだと思っていますし、アーティストが社会問題について声をあげることは望ましいと思っています。ただ彼らは自分たちがしたいときに発言しますし、彼らが何をすべきか、すべきではないかについて私が口を挟むことはありません。K-popについて一般の人たちが抱いている誤解の一つに、プロデューサーがアーティストのかなりの部分までコントロールしているというものがありますが、そんなことは不可能です。もしアーティストが何かを表現したくなったら、彼らのメッセージをより誠実な表現に、またより商業的に価値のあるものへと洗練させるのが私の仕事だと考えています。
「ロックスター」について言及されましたが、アメリカではアーティストは既存のものに反抗することで拍手喝采されるという傾向があり、独立心を持って「体制」と戦う姿勢に高い価値が置かれます。韓国文化の文脈から見たときに、アーティストとマネージメントの間にはもっと尊敬し合う関係性があると思いますか?
アジアの文化と西欧の文化は確実に違うと思いますが、それが社会に対しての反動にどう影響を与えているかというと…韓国には多くの革命の歴史がありますが、対人関係においては年上を敬うという文化があります。こうした文化だから声を上げやすい・上げにくいとか、西欧のアーティストはこうでアジアのアーティストはこうだと言うことはできませんが、一般的に、特にK-popでは、アーティストと会社はリスクをとることを好まない傾向にあります。
しかし体制との戦いに関して言うと、アメリカのアーティストは自分の追求したい音楽を追求できる限り、マネージメントと協力するケースが多いです。近年、そのほうが得られる収入源が多いからといって大きなレーベルと契約しないアーティストが増えていますが、それを体制に対する宣戦布告だとは思いません。事実、以前に比べて社会問題について声を上げる西欧のアーティストは減りつつあります。
あなたはBTSのメンバーにソロの仕事をする機会を常に与えてきましたが、それが彼らをK-pop界での唯一無二の立場に押し上げたのでしょうか?
彼らの唯一無二の立ち位置が個々の独立心から生まれたとはあまり思っていません。通常K-popアイドルの多くは、ある程度の成功を収めてからソロとしてのキャリアについて考え始め、マネージメントと話し合ってソロのプロジェクトを追い求めていきます。Big Hitが彼らに自由をたくさん与えているから、彼らがソロ曲を出しているわけではありません。他と違うのは、Big Hitがソロ曲をプロデュースしているのではないという点です。私たちはあくまでチームとしてのイメージを重要視していますが、もちろんメンバーは一人一人違う人間で、それぞれのアイデンティティーがあります。なので私たちは彼らがミックステープをつくるための応援とサポートをし、公式のソロプロジェクトよりも責任の少ない形で自分自身を表現できるようにしています。こうしたアプローチを取り始めてから、他の多くの会社も公式のソロプロジェクトの他に非公式のミックステープや無料トラックをリリースするようになりました。そういう意味でも、Big Hitが音楽業界を豊かにする手助けをしていると考えています。
あなたは先日ソースミュージックを買収して、新しいガールズグループの結成に関心を示していました。今はどんな動きですか?
(ソースミュージックグループの)GFriendについて、彼女たちはすでに素晴らしいコンテンツをリリースしています。我々がしようとしているのは、ストーリーラインとコンセプトを洗練させて整理し、彼女たちが次のプロジェクトに取り組むときに、新しいスタイルにたどり着く上での必然性が示せるようにすることです。また、ソースミュージックと合同でガールズグループのオーディションのプロモーションも行う予定です。アニメ・ファミリー映画というカテゴリにDisneyやMarvel、スターウォーズなどがあるように、K-popの良いところは保ちつつ、マーケットでのセグメンテーションに取り組んでいけたらと思っています。
まだARMYの話をしていませんでした。あなたはWeverse(ファン向けアプリ)とWeply(e-コマースのプラットフォーム)の開発や映画など、ファンを巻き込む様々なアイデアを企画していますが、BTSのファンとBig Hitのフォロワーが次に期待していいことは何でしょう?
まずは次のアルバムです。素晴らしい作品になります。BTSはYoutube時代のBeatlesだとか、21世紀のBeatlesだという人も多いことはご存知かと思います。とても光栄なことですが、彼らはまだそのような地位には達していません。しかし、こうした形容詞をつけてもらえる意味合いもあるとは思っていて、それはBTSがグローバルなファンダムを築き上げられたこと。これは非常にレアなことです。巨大なファンダムを通じて、彼らは流通の定義を書き換え、消費者との新しいコミュニケーションの形をつくっている。さらに彼らはこの時代特有の精神性を身にまとい、新しい音楽的なメッセージを作り上げた。そういう意味で、多くの人にBeatlesを思い起こさせるのだと思います。
この名誉ある称号を守りたいですし、Beatlesのように英雄的な存在として長く語り継がれることを願います。そこにたどり着くためには、メジャーなグローバル部門での認知を受け続けることができたら良いでしょう。グラミー賞で何かのリアクションを得られたら良いですね。ARMYは長い間、グラミーでのBTSのパフォーマンスを待ち続けてきました。幸運にもアカデミーのメンバーになれたので、これについてはグラミー選考チームとぜひとも話し合いをしていきたいと思っています。私たちはグラミーに貢献できる象徴的な価値を持っているはずですから。
(終)
原文記事の記者:Raisa Bruner氏
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【1/2】BTSの生みの親が語る、K-Pop界スーパースターの創設秘話
2019年10月に投稿されたTIMEのweb記事を2回にわけて和訳します。こちらは前半です。
↓オリジナルの記事(英語)↓
パン・シヒョクは元々はアーティストだった。しかし彼は現在、Big Hitエンターテインメントの創立者かつ共同代表であり、さらにはBTSの生みの親として知られる存在だ。BTSは世界で最もビッグなボーイバンドで、韓国出身のアーティストを西欧諸国の市場に呼び込む主導的な役割を果たしたK-popグループである。パン氏は当初Hitmanという名前で作曲家としてK-pop業界に入り、数十億ドル規模の韓国の音楽市場を独占する「御三家」会社のひとつ、JYPとともに仕事をしていた。しかし2005年、彼はJYPを去って自分の会社を立ち上げる。現在、高い人気と収益性のあるアーティトという金鉱を掘り当てたBig Hitは、音楽業界でも最も興味深いケーススタディの対象だ。
パン氏は1時間半のインタビューを通して、BTSの創設秘話について、西欧アーティストとKpopアーティストの違いについて、また彼が驚いたというKpop産業の実態についてTIMEに語ってくれた。「AをしたらBになる、という風に言うのは難しいです」と彼は語る。「しかし米国市場でのBTSの成功は、アメリカでのメインストリームの成功法則と違うことは確かです。BTSの成功は、ファンとの直接的な交流により築き上げられた忠誠心が大きく関係しています」。パン氏は献身的なファンベースと複雑なユニバース(宇宙)を築き上げた同様のブランド例としてDisneyやAppleを挙げたが、その上で何よりも重要なのは、製品、つまり音楽そのものだと強調する。
パン氏は自身の影響力については謙虚で、また自分の役割について明確に示したいと考えている。パン氏は自分の運とタイミングの良さを挙げた上で、BTSがなぜ特別な存在になったのかを明らかにしていく。彼は将来の予測を立てることについても慎重だ。「BTSは将来、英語で歌を出しますか?いつまでアメリカで活動しますか?大きなレーベルと契約する予定はありますか?などと聞かれたら、アーティスト自身が常に自分たちで考えてベストな決断を下す必要がある、としか答えられません。彼らがこうするべきだというようなことは、私には言えません」と彼は語る。
以下は、パン氏とTIMEの対話を要約・翻訳したものである。
Big Hitを立ち上げたときに、ポップミュージックの中でもいろんなジャンルの選択肢があったと思いますが、なぜアイドルグループという形を選んだのですか?
私が会社を立ち上げたときはフィジカルのアルバム売上が急低下していて、デジタルの売上もそれを補填するほどは上がってきていなかったんです。でもK-popアイドルグループには収益源を多様化するチャンスが沢山あり、非常に情熱的なファンがいるというアドバンテージがあった。そうした背景から、低下したアルバム売上をコンサートの売上でカバーできると考えたんです。また当時は、滅びゆく音楽業界の代わりとなる唯一のものはライブのパフォーマンスだと皆が話していました。ライブパフォーマンスをベースとしたアーティストのモデルがもし韓国で作れるとしたら、それはK-popアイドルグループだろうと考えたんです。
BTSが独自の道を歩むことになった、他と一線を画する要因はなんだと思いますか?
彼らの誠実さ、一貫性、そして時代の精神を具現化する能力です。アイドルグループとしての結成時に、ヒップホップはもちろん、自分たちのしたい音楽をここで追求することができると私は彼らに約束しました。BTSの音楽はヒップホップだったので、自分たちの思いを曲に乗せて表現できましたし、私たちはその部分に干渉しませんでした。その代わりその歌詞が本心からのものでないと感じたら、口を挟みます。私は約束を守りましたし、それが大きな結果を生み出したと思っています。個人的に、アーティストが自分の本心を常に語る必要はないと思っていますが、BTSは世界中の若者がそのとき求めていた何かに触れたのだと思います。
デビュー以来、BTSが突然ギアを切り替えたりペースを変えたりしたことは一度もありません。彼らはいつも一貫している。それが世間を納得させたのだと思います。現代に生きる若い世代が感じる痛みに向き合うことを避けずに、多様性と正義、そして若者と弱い立場に置かれた人々の権利を尊重している。こうした要素が彼らを押し上げたのだと思います。
これまでのところ、BTSは今年のアメリカ国内でどのアーティストよりも多くフィジカルアルバムを売り上げています。これについてどう思いますか?
BTSのこの現象は私には皮肉なものに思えます。私はフィジカルアルバムの売上下落を予測して、パフォーマンスと忠誠心を基盤としたモデルが解決策になると思っていましたから。ただその上でいうならば、私は古いタイプの音楽プロデューサーなので、アルバムのクオリティに大きな重点を置いていますし、アルバムに焦点を置いたプロダクションをしています。良い音楽とコミュニケーションがあれば、売り上げはついてきます。K-pop業界全体が世界の音楽業界の傾向とは逆流して、アルバムの売上を引き上げているとみられていますが、個人的にはこの理由は説明できませんし、これが今後も永遠に続くとは思っていません。
他のK-Popアーティストが牽引力の獲得に苦戦している中、なぜBTSはアメリカでこのように印象的な躍進を遂げられたのでしょうか?
基本的に、BTSのアメリカでの成功の理由の多くは運が良かったからだと考えています。私の戦略が素晴らしかったからとか、BTSが米国市場にピッタリはまっていたからとかではないんです。そうではなく、彼らのメッセージが特定の層のニーズと共鳴し、デジタルメディアを通じて急速に広がったことが原因だと思います。またBTSの曲が当時アメリカで語られていなかったテーマに訴えかけ、アメリカの若者がそこに反応し、それが数字(売上)となって証明された形だと考えます。
今年の目玉の動きのひとつとしてそれぞれのグループの中で築いている「ユニバース」を強化し、ライブやアルバムを超えてファン同士を繋げようとしていますが、それはなぜですか?
BTSやK-popアイドルに関して、ファンはコンサート以外でも自分の愛するアイドルの生活スタイルの一部になりたいと願っていますが、その願いを満たすものが既存のマーケットにはありませんでした。私はビジネスを拡大するために拡大するという考えが嫌いです。拡大は音楽に根付いているものでなくてはなりません。そういう考えでこのような動きを取りました。K-popアイドルは「歌手」という括りだから歌手と同じだと考える人もいますが、典型的な歌手とはファンのニーズが違います。コンサートに行く人もいればアルバムや曲を購入したりTシャツを購入するファンもいるでしょうが、K-popアイドルのファンは、アイドルを身近に感じていたいんです。BTSは世界中のほとんどすべての国でしっかりとした売上を挙げられる、我々の会社での唯一のチームです。つまりBTSのファンダムのために働くことは、Big Hitが提供する最大のサービスの一つだと言えます。
音楽を通して、またソーシャルメディアを通して彼らが表現しようとしているものが何か、どのように把握していましたか?
率直に話すと、K-popアーティストは平均的なアーティストの基準と比較してアクロバチックなレベルのパフォーマンスが求められます。歌も完璧に歌えて、完璧なコンディションでいないといけない。スキル習得に特化した高レベルで集中的なトレーニングが必要とされます。一方で、私は訓練生はソーシャライズのスキルも磨くべきだと考えてきました。BTSが訓練生のときは、ソーシャルメディアの使い方に関してスタッフとの間で内部での衝突がありました。スタッフは「安全策を取ろう。ソーシャルメディアには履歴が残る。将来の彼らにとって有害な結果になるかもしれない」と主張していました。若い人がルールに従う難しさもある。なので大変だったことも多少ありましたが、私はたとえ間違いを犯してもそこから学ぶことは正しいことだと信じていたので、比較的自由のある訓練生システムにしていました。
我々の会社では多くの時間を、ソーシャルメディアの教育をはじめ、アーティストとしての人生についての教育に費やしています。ガイダンスを提供した後はアーティスト自身に任せて、何か必要なことがあれば会社に言うようにこちらの窓を開けておきます。こうした教育もあって、彼らの真心がファンの元まで届くようになったと思います。BTSの成功を受けて、訓練生の仕組みをもう少し学校のようなもの、メンター制度やコーチング制度、そして生徒たちが一緒に取り組む機会があるようなものに変更しようとしているところです。
(後編に続きます)
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【和訳2/2】音楽&歌詞:ストーリーテラー、ミン・ユンギ
2019年7月に投稿されたSeoulbeats.comのweb記事を2回にわけて和訳します。こちらは後半です。
↓前半和訳↓
↓オリジナルの記事(英語)↓
※後半記事の歌詞は英語訳からの日本語訳をしています。
音楽&歌詞:ストーリーテラー、ミン・ユンギ
しかし自分の脆さを驚くほど率直に晒け出すSUGAは、その後も歌詞の中で自分の不安を表現し続ける。2017年にリリースされたLove Yourself: Herの隠しトラックである"Sea"の中で、彼はこうラップする。
かつて恐れていた砂漠が
俺たちの血、汗、涙で海になった
でも幸せの中にある
この恐れはなんだろう?
ここが元は砂漠だったことを
俺たちは皆知っている
2019年にリリースされたMap Of The Soul: Personaに収録された"Home"でも、彼は同じような思いを歌っている。
世間は俺たちが世界を手に入れたと思ってる
デカい家、デカい車、デカい指輪
欲しいもの全てを手に入れても何か虚しい
全てを成し遂げた人の、初めての感覚
2013年のデビュー曲について言及しないわけにはいかない。それ以降、SUGAは "Ddaeng" や "Nerver Mind"などの曲中でも、ヘイターは彼の意欲を萎えさせるどころか成功に向けて押し上げてくれたと歌っている。また彼は自分を守ってくれた人たちに感謝し、中でも実の兄への感謝の気持ちをミックステープの"Skit"のなかで表している。自分の楽しみの多くを諦めなくてはならなかったことやいつもマスクをつけなくてはならないこと("Outro: Her")を認めながら、SUGAは成功の代償について明確に理解している。リリックを通して彼が語る教訓はとてつもなく説得力がある。もしあなたがとても一生懸命に努力すれば、そしてどんな困難が待ち受けても耐え抜くことができれば、あなたは夢を掴むことができる。SUGAはこのことを“Never Mind” や“Give It To Me”などの曲で強調し、後者の曲中ではこう歌っている。
成功した理由を聞かれても
特に何も言うことはない
少なくともお前より短い睡眠で
お前より練習してここまで来た
成功の秘訣はまだわからないが
失敗の仕方はわかる気がするよ
SUGAの言葉で語られる彼の物語はとても魅惑的だ。夢を描け、自分の快適な日常から一歩外に出ろと聞き手を掻き立てる。聞き手は彼の成功例を追いかけて、自分が彼と同じことを成し遂げられるかどうか試したくなる。行く手には確かに困難が待ち受けているが、それでも「前に進め」と彼は"So What"で歌う。
悩みの9割はお前の頭で作り出した沼だ
もちろん、自分と自分の苦しみと自分の夢ばかり追いかけるという姿勢は少しばかり自己中心的だ。SUGAの叙情性がどれだけひたすらに彼自身、つまり熱烈でエゴイスティックな「俺」を中心に展開しているかには目を見張るものがある。Minoの"Fear"やOvanの"Happiness"などの他アーティストの類似曲とは違い、彼の歌詞は彼が他者のためにしたいことではなく、家族のためにしたいことですらない。完全に自分中心のものであり、いわゆる立派な歌詞だとは言えないかもしれない。
だがその代わり、容赦ないほどに正直だ。SUGAがピントを合わせる自分自身、自分の精神状態、自分の欲、自分の成功への渇望は全世界から見えるようにさらけ出されて、まるで鏡のように聞き手に突きつけられる。それは深い浄化作用をもたらし、聞き手の中に眠る似た感情に共鳴してそれを呼び起こし、ほんの少しの時間であれ、聞き手の感情を解放させてくれる。
こんな風にファンとつながれるアーティストは稀少で、それを可能にしているのはSUGAの容赦なき正直さなのだ。
もちろんSUGAのすべての歌詞が彼の物語を中心に回っているといいたいわけではないが、この傾向が有意義であることは確かだ。イ・ソラの"Song Request"(Tabloプロデュース)は、ある女性とラジオの会話からなる歌だ。辛いときに女性はラジオに、もしくは音楽に癒しを求め、泣ける曲が聴きたいとDJに頼む。ラジオは優しく応え、SUGAの声が響く。
そう、僕は誰かにとって春で
誰かにとっては冬
誰かにとっては終わりで
誰かにとっては始まり
誰かにとっては幸せで
誰かにとっては悲しみ
誰かにとっては子守唄で
誰かにとっては騒音
生まれてから終わりまで
君と一緒だよ
どこでも共にいること忘れないで
いつでも君の日々を慰めるから
時々は僕にもたれて休めばいい
[M/V] LeeSoRa(이소라) - Song request(신청곡) (Feat. SUGA of BTS)
とある曲を聴いたときに、昔それを聞いたときの瞬間、匂い、音、感情を思い出したことがない人はいないのではないか。 音楽は私たちを動かす力がある。明るい日を悲しい日に変えることもできるし、悲しい日を幸せな日に変えることもできる。SUGAのこのポエティックな歌詞は、音楽の力の賛歌だ。
さらにSUGAはラップにバリエーションを盛り込み、それぞれの曲に違う要素を付け加えることがあり、その実験が特にうまくいく場合もある("Boy With Luv"が代表的な例だ)。ラップのバリエーションを毎回期待できるのは楽しい。またファンは、彼が自分の出番になる前につぶやく"SUGA"という囁きを楽しみにしている。
こうしたことすべてが、ミン・ユンギを音楽業界で突出して魅力的なリリシストに仕立て上げている。音楽家とラッパーの顔をしたストーリーテラー。それが繊細さであれ、大胆不敵な攻撃性であれ、彼のパーソナリティーはそのリリックを通じて光り輝く。SUGAの歌詞はそのシンプルさで人を欺くところがあるし、「小さな猫ちゃん」と呼ばれるような可愛いアイドルのルックスも誤解されやすい要因ではあるが。
アイドルという商業的な成功の道を選んだにもかかわらず、SUGAは唯一無二の叙情性と彼だけが加えられる音楽的な個性を持ち続け、多くの聞き手を癒してきた。もし将来、彼がリリックを通じて自分の物語を語ることをやめたとしても、すでにリリースされた沢山の曲たちがこれから長い期間にわたって、大勢の聞き手に安らぎを与えていくだろう。
(終)
●この記事のライターRimiさんのプロフィール
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【和訳1/2】音楽&歌詞:ストーリーテラー、ミン・ユンギ
2019年7月に投稿されたSeoulbeats.comのweb記事を2回にわけて和訳します。こちらは前半です。
↓オリジナルの記事(英語)↓
記事中の歌詞について:基本は記事中の英語からの和訳ですが、一部、下記リンクの韓国語からの和訳も使用させていただきました。
音楽&歌詞:ストーリーテラー、ミン・ユンギ
「ワイルド」「率直」そして「賢明」。BTSのSUGAは歯に衣着せぬ性分だ。BTSは豊かな表現力を用いて様々な題材の歌詞に取り組んできたことで知られる。リーダーRMの歌詞は入り組んだ言葉遊びと美しい情景表現が特徴だが、SUGAの歌詞は物事を簡潔に捉え、自分の経験を直接的に引用したものが多い。実際、彼の歌詞を読み解いてみると、自ずとその半生の多くが明らかになる。
SUGAの音楽への愛情は、その歌詞から一番ダイレクトに伝わってくるメッセージだ。特に顕著なのは"Fist Love"で、これは幼少時代に家の隅にあったピアノに捧げられた曲。少年期に経験したこのピアノとの一時的な別れ、そして再びピアノの元に戻ったときに感じた確信について歌っている。
しばらくの間
ぎこちなくまたお前を撫でていた
長い間離れていたのに
何の反発もなく また俺を受け入れてくれた
Without you, I am nothing
しかし、ピアノを愛するラッパーはどのようにしてアイドルになったのか?そのストーリーの続きは2016年にリリースされたミックステープのAgust Dで語られる。そこではスターダムにのし上がるまでの旅路と、それに伴ってどんな犠牲を払ったかについて詳しく描かれている。例えば"724128"という曲の中で、彼はBig Hit Entertainmentとのオーディションを思い起こし、なぜ自分がソウルに来て訓練生になったのかについて歌う。
大邱で音楽を作ろうとした
音楽学校とやらの学長になったり
でもそんな考えにガツンとやられた
なにはともあれ人生は一度切り
だったらナンバーワンを目指したい
勉強では達成できないナンバーワンを
どうやら音楽で手に入れたみたいだ
俺の周りの10人に1人は言ってた
このアホはまた
どうしようもない病気に
かかったみたいだなって
この決意がのちにどんな結果をもたらしたのか、私たちは知っている。J.コールの"Born Sinner"のカバー曲の歌詞に出てくる、成功を切望していた小さな事務所出身の少年たちが、今やグローバルなスーパースターに。BTSの軌跡は本物のサクセスストーリーだ。
相変わらず大邱出身の
田舎ラッパーと違いはない俺
but「アマチュア」の単語の上に
「プロ」と上書きした
決して簡単な道のりではなかったとSUGA自身も語っている。終わりのない練習、訓練生時代の交通事故、そして壊れていく精神状態…。SUGAのリリックはもしかしたら「適切」以上のものを吐露しているのかもしれない。しかし彼はそうした体験を、心を開いた真摯な姿勢で曲にして届けてくれた。そのエモーショナルなラップで奏でられるSUGAの音楽は、親密で生々しい。彼の頭の中に連れていかれて、そこで彼と一緒に過ごし、彼の感じるがままを感じるような音楽だ。こんなにも近い距離でアーティストを感じたいと思う人ばかりではない。もう少し距離のある関係性を好む人もいるだろう。しかしこのような形の芸術体験は、正しく作用すれば癒しにもなりえる。
このミックステープの真の傑作は"The Last"だ。SUGA自身の抑うつとの闘いについて書かれているからではなく、彼の人生で起こった実際の出来事を取り上げてその闘いのリアルを歌っているという点で、この曲はとてもユニークだ。両親がやってきて彼を精神科に連れて行ったこと、コンサートの日にトイレに隠れたこと…。この曲は意図を持って聞き手を揺さぶる。
対人恐怖症を発症したのは18歳の頃
ああそうさ、それぐらいから
俺の精神は汚染されていった
時々自分自身が怖くなって
自己嫌悪とまた現れたうつ病のおかげで
ミンユンギはもう死んだ (俺が殺した)
K-popファンダム以外の世界ではアイドルは常々、大量生産・大量消費的な音楽・パフォーマンスだという理由で軽視されがちで、「本物の」アーティストだとはみなされない。SUGAの中で、ラッパーとしての理想の自分と、アイドルとしての現実の自分をうまく調和できないことによる葛藤があった。また彼は成功を求める圧倒的な欲望によって縛られていた。この曲には2つのパートがあり、それをブリッジがつなげている。
俺の不幸せがお前らの幸せなら
不幸になってやるよ
憎悪の対象が俺なら
断頭台に上がってやるよ
腹の底からの叫び声が背後に聞こえ、その後に沈黙がやってくる。彼はアイドルでありミン・ユンギである自分の運命、人間でありラッパーである自分の運命を受け入れ、断頭台の元に歩いていく。その見返りとして、「甘さも苦さもクソの味すら味わった」SUGAという人物は、自分の目の前で夢が叶う様子をまざまざと見届ける。
ただの想像が現実になっていく
ガキの頃の夢が目の前に
たった二人の前で歌ってたクズ
今じゃ東京ドームが目の前だ
しかしAgust Dの公開から3年が経ち、事情は様変わりしたようだ。2018年のLove Yourself: Answerのリリース後に放映されたVliveで、「ソロ曲"Seesaw"のパフォーマンスにダンスの振付を入れたのは自分のアイデア。なぜなら僕は結局のところアイドルだから」とSUGAが話したことからも、彼がアイドルとしての自分のアイデンティティーと和解したことが伺える。
これまでBTSがリリースした傲慢なディストラックの数々の歌詞に反映された彼らの壮大な成功ぶりを見ると、SUGAは2013年のデビュー曲 "No More Dream"に出てくる「デカい家、デカい車にデカい指輪」はもちろん、全てを手に入れたように見えるかもしれない。彼のリリックもそれを示唆している。例えば "Cypher pt.4"で彼はこう豪語する。
ペイデイ、ペイチェック
手首の上には ROLEX
I’m so high 見くびんな
お前が助走をつけても
手が届くには高すぎる
ミックステープのタイトル曲とも言える"Agust D"では、SUGAは自分の舌、言い方を変えれば自分のラップは、「お前を香港送りにする」とラップした。これはスラングで聴き手にオーガズムをもたらすという意味だ。また次のリリックも決してお行儀がよくはない(筆者も意味がわかりかねる)。
ごろつきだろうがwackだろうがfackして
俺は歴史を床に刻む
ビートにのったラッパーたちから
いつも取り分をくすねる
(↓後半に続く)
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